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夏を過ごしてわかる家の性能——数字だけでは見えない「本当の快適さ」

こんにちは。

9月に入りました。

暦の上では秋ですが、日中はまだまだ30℃を超える日も多く、夏の暑さが残っています。それでも朝晩は少しずつ気温が下がり、真夏とは空気が変わってきたように感じます。

6月からこれまで、夏の住まいについて、

「除湿と冷房の違い」

「室内干しが乾く家・乾かない家」

「高断熱住宅ほど日射遮蔽が重要になる理由」

「窓で夏の暑さは大きく変わる」

「エアコン1台で家全体を涼しくする仕組み」

「なぜ2階だけ暑くなるのか?」

といったテーマでお話ししてきました。

今回は少し視点を変えて、

「実際にひと夏を過ごしてみて、その家の性能はどうだったのか」

ということについて考えてみたいと思います。

住宅性能というと、UA値やC値などの数字が注目されます。

もちろん、それらは家づくりを考えるうえでとても大切な指標です。

しかし、家は数字を見るためにつくるものではありません。

実際に暮らしてみて、

「暑い日に家へ帰ってきたとき、どう感じるのか」

「夜、寝室へ行ったときに暑くないか」

「朝起きたときに不快ではないか」

そうした毎日の暮らしの中で初めて、住宅性能の本当の意味が分かるのではないかと思います。

UA値が良ければ、それだけで快適なのか?

高性能住宅を調べていると、まず目にするのが「UA値」です。

UA値は、住宅の外皮を通してどれくらい熱が出入りするのかを表す数値で、小さいほど断熱性能が高いことを意味します。

私たちも住宅を計画する際には、この数値を大切にしています。

ただし、

「UA値が良い=必ず快適」

というわけではありません。

例えば、断熱性能が高くても、夏の強い日射が大きな窓から入り続ければ室温は上昇します。

また、気密性能が十分でなければ、せっかくエアコンで整えた空気が隙間から逃げたり、外から暑く湿った空気が入り込んだりします。

さらに、エアコンをどこへ設置するのか、冷気がどのように家の中を流れるのかによっても快適性は大きく変わります。

つまり住宅性能は、

「断熱性能だけ」

「気密性能だけ」

「高性能な窓だけ」

と一つずつ切り離して考えるものではありません。

断熱、気密、窓、日射遮蔽、換気、空調。

それらが一つの家の中でうまくつながって初めて、本来の性能が発揮されるのだと思います。

夏に暮らして分かるのは「室温が上がりにくい」ということ

高断熱住宅の夏の特徴として、まず感じるのが室温の変化が小さいことです。

一般的な住宅では、朝は比較的涼しくても、昼から午後にかけて室温がどんどん上昇していくことがあります。

特に2階は屋根からの熱の影響も受けるため、夕方に帰宅すると、

「2階へ上がった瞬間にムッとする」

ということも珍しくありません。

前回のブログでもお話ししましたが、これは夏の住宅で起こりやすい現象です。

一方、断熱性能が高く、窓からの日射もしっかり抑えられている住宅では、外気温が上がっても室温への影響が小さくなります。

もちろん、まったくエアコンを使わなくても涼しいという意味ではありません。

夏は夏ですから、冷房は必要です。

大切なのは、

「外が暑くなったから、家の中も同じように暑くなる」

という状態になりにくいことです。

エアコンでつくった涼しさを逃がしにくく、外から入ってくる熱も少なくする。

その結果、少ない冷房能力でも室温を安定させやすくなります。

これが、夏を実際に過ごしてみると分かる断熱性能のメリットだと思います。

私の自宅では小屋裏エアコン1台で夏を過ごしています

私自身の自宅では、夏は小屋裏に設置した14畳用のエアコン1台を24時間運転しています。

「14畳用のエアコン1台で、本当に家全体が冷えるんですか?」

と聞かれることがあります。

実際には、エアコンだけが特別なのではありません。

自宅はUA値0.37、C値0.5という性能で、窓からの日射や空気の流れまで含めて計画しています。

そのうえで小屋裏エアコンを運転し、冷たい空気を上から下へ流すことで家全体を冷やしています。

以前ブログでご紹介した夏の実測では、外気温が35℃前後まで上昇する日でも、リビングは27~28℃程度で比較的安定していました。

もちろん、「27~28℃なら誰にとっても快適」というわけではありません。

人によって暑さの感じ方は違いますし、湿度によって体感温度も大きく変わります。

ただ、自宅で実際に生活して感じるのは、

「エアコンの風で冷やされている」

という感覚よりも、

「家全体がなんとなく涼しい」

という感覚に近いということです。

リビングだけ冷えていて廊下へ出ると暑い、2階へ上がると急に暑くなる、という大きな温度差が少ない。

これが私自身、実際に暮らしてみて感じている大きな違いです。

本当に快適かどうかは「廊下」や「トイレ」で分かる

住宅の快適性を確認するとき、私はリビングだけを見てもあまり意味がないと思っています。

リビングには多くの場合、大きなエアコンがあります。

そのため、リビングだけなら断熱性能がそれほど高くない住宅でも十分涼しくすることができます。

では、どこを見るのか。

例えば、

廊下

トイレ

洗面脱衣室

階段

そして2階の寝室

こうした場所へ移動したときに、

「暑い」

「ムッとする」

と感じるかどうかです。

昔の住宅では、「夏はリビングだけ冷房して、廊下やトイレは暑い」という暮らし方が普通でした。

各部屋にエアコンを設置すれば、その部屋ごとに冷やすことはできます。

しかし、家全体を一つの空間として考えれば、本当に快適なのは、

「どこへ移動しても大きな温度差を感じないこと」

ではないでしょうか。

冬にヒートショックの話をするときには部屋間の温度差が注目されますが、夏も同じように、家の中の温度差が小さいことは暮らしやすさにつながります。

「エアコンをつけていない部屋」がどうなっているか

これも住宅性能が分かりやすいポイントです。

各部屋にエアコンを設置している住宅では、使っている部屋は快適でも、エアコンを切っている部屋は暑くなることがあります。

例えば子ども部屋。

日中は誰も使わないためエアコンをつけない。

夕方になって子どもが部屋へ入り、

「暑い!」

となってから冷房をつける。

よくある光景だと思います。

住宅そのものが暑くなっている場合、空気だけを冷やせばよいわけではありません。

日中の日射によって床や壁、天井、家具まで暖められているため、それらの熱を取り除くまでには時間がかかります。

一方で、家全体の温度をある程度一定に保っていれば、

「使っていなかった部屋へ入った瞬間に暑い」

ということが少なくなります。

これは、毎日暮らしていると数字以上に大きな違いです。

夏の快適性は「湿度」で大きく変わる

そして、この夏のブログで繰り返しお話ししてきたのが湿度です。

室温だけを見れば27℃。

同じ27℃でも、

湿度が70%ある部屋と、

湿度が50~60%程度の部屋では、

感じ方はまったく違います。

湿度が高ければ汗が蒸発しにくくなり、体は蒸し暑く感じます。

そのため、

「室温を何℃にするか」

だけで快適性を考えることはできません。

特に高断熱・高気密住宅では、室温が安定しやすい分、湿度管理の重要性がより分かりやすくなります。

エアコンの冷房や除湿を上手に利用しながら、

温度と湿度の両方を整える。

私自身も夏を過ごしていて、

「あと1℃温度を下げるより、湿度が少し下がった方が気持ちいい」

と感じることがあります。

快適な家というのは、単純に「室温が低い家」ではないのだと思います。

エアコンを止めた瞬間に暑くなる家との違い

住宅性能の差が分かりやすいもう一つの場面が、エアコンの運転が弱くなったときです。

断熱性能が低い住宅では、冷房を止めると外の熱の影響をすぐに受け、室温が上がっていきます。

言ってみれば、

エアコンの力で無理やり快適な環境をつくっている状態です。

一方、高断熱・高気密住宅では、外部から入ってくる熱が少ないため、一度整えた室内環境が急激には変化しにくくなります。

この「温度変化がゆっくり」ということも、住宅性能の大きなメリットです。

もちろん夏にエアコンを止めることをおすすめしているわけではありません。

むしろ、自宅では24時間運転しています。

室温を大きく上下させるより、弱い運転で安定した状態を維持する方が快適だからです。

住宅性能を高める目的は、

「エアコンを使わない家をつくること」

ではありません。

「エアコンを上手に使いながら、少ないエネルギーで快適に暮らせる家をつくること」

だと私は考えています。

電気代だけでは測れない「暮らしやすさ」

高性能住宅の話になると、

「電気代はいくら安くなりますか?」

という質問もあります。

もちろん、省エネルギー性は大切です。

ただ、住宅性能の価値を電気代だけで判断するのは少しもったいないと思います。

例えば、

暑い廊下を通らなくてもいい。

夜、寝室へ行ってすぐ眠れる。

朝起きたときから部屋が暑くない。

お風呂上がりに脱衣室で汗だくにならない。

料理をしていてもキッチンだけ極端に暑くならない。

こうしたこと一つひとつは、電気料金の明細には表れません。

しかし、毎日暮らす家では、こうした小さな快適さの積み重ねが非常に大きいのです。

住宅性能は、

「年間で何万円得をするのか」

だけではなく、

「その家で毎日どんな生活ができるのか」

というところまで含めて考えてほしいと思います。

数字は「目的」ではなく「快適な暮らしをつくるための手段」

私は住宅をつくるうえでUA値やC値を重視しています。

数値を測ることも必要だと考えています。

なぜなら、目に見えない断熱や気密を感覚だけで判断することはできないからです。

ただし、良い数字を出すことそのものが目的ではありません。

UA値を良くするのは、外の暑さや寒さの影響を小さくするため。

C値を良くするのは、意図しない隙間から外気が入り込むのを抑え、換気や空調を計画通りに機能させるため。

窓の性能を考えるのは、夏の日射や冬の冷気の影響を少なくするため。

軒を考えるのは、夏の日差しを遮りながら冬の日射を取り込むため。

そしてエアコンの位置を考えるのは、少ない台数でも家全体を快適にするためです。

すべて最終的には、

「そこで暮らす人が快適に過ごすため」

につながっています。

まとめ——家の性能は「一番暑い日にどう感じるか」で分かる

住宅性能について調べていると、どうしても数字の比較になりがちです。

UA値はいくつなのか。

C値はいくつなのか。

断熱材は何mmなのか。

窓は何を使っているのか。

もちろん、どれも大切です。

しかし、家が完成した後に毎日見るのは性能表ではありません。

実際に家の中で生活します。

暑い日に仕事から帰ってきたとき。

2階へ上がったとき。

お風呂から出たとき。

夜、寝室へ入ったとき。

そして朝起きたとき。

その一つひとつの瞬間に、

「この家は過ごしやすいな」

と感じられるかどうか。

私はそこに住宅性能の本当の価値があると思っています。

夏の暑さが厳しくなる今だからこそ、家づくりを考えている方には、単に「高断熱です」「高気密です」という言葉だけではなく、

「真夏にこの家でどんな暮らしができるのか」

というところまで考えてみてほしいと思います。

数字は快適さを確認するために必要です。

でも、その数字の先にあるのは毎日の暮らしです。

暑い夏を実際に過ごしてみたときに、

「この性能にしておいて良かった」

と思える家。

そんな住まいをつくることが、本当の意味での高性能住宅なのではないかと思います。

 

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