工事日誌

軒がある家とない家の違い

おはようございます。
10月も半ばになり、朝晩はずいぶん涼しくなってきました。
日中はまだ半袖で過ごせる日もありますが、ふと空を見上げると、夏よりも太陽が低くなっていることに気づきます。
夕方の日差しが、部屋の奥まで差し込むようになった。
そんな変化を感じている方もいるのではないでしょうか。
以前のブログで「住宅における軒の役割」についてお話ししました。
今回はその続きとして、
「軒がある家とない家では、実際の暮らしの中で何が違うのか」
を、ちょうど今の季節、秋の日差しから考えてみたいと思います。

太陽の高さは季節で大きく変わる

まず、太陽の高さのおさらいです。
静岡市あたりで、正午の太陽の高さはおおよそ次のようになります。
夏至(6月下旬) 約78度
秋分・春分(9月下旬・3月下旬) 約55度
冬至(12月下旬) 約32度
夏はほぼ真上から。
冬はかなり低い位置から。
そして秋は、ちょうどその中間です。
この「太陽の高さの違い」が、軒の効果を考えるうえでとても大切になります。

軒は「夏は遮って、冬は入れる」

夏の高い太陽は、軒があれば窓に届く前に遮ることができます。
一方、冬の低い太陽は、軒の下をくぐって部屋の奥まで届きます。
つまり軒は、
夏は日差しを遮る
冬は日差しを取り込む
という、季節に応じた切り替えを、何もしなくても自然に行ってくれる装置です。
電気も使いません。
操作もいりません。
これが、日本の家が昔から深い軒をつくってきた理由のひとつだと思います。

秋は「軒の効き方」が変わり始める季節

では、秋はどうでしょうか。
9月から10月にかけて、太陽の高さは少しずつ下がっていきます。
すると、夏の間は軒でしっかり遮られていた日差しが、少しずつ窓の下の方から室内へ入るようになります。
軒がある家では、
夏 → 床にほとんど日が当たらない
秋 → 窓際の床に少し日だまりができる
冬 → 部屋の奥まで日が届く
というように、季節に合わせて日差しの入り方がゆるやかに変わっていきます。
これがとても心地よいのです。
一方、軒がない家では、夏も秋も冬も、窓には常に日差しが当たります。
季節に関係なく、窓の性能とカーテンやブラインドだけで日差しを調整しなければなりません。
■残暑の時期に差が出やすい
特に違いを感じやすいのが、9月から10月初めの残暑の時期です。
今年は9月に雨が多く残暑がそれほど厳しくなかったです。
しかし、近年は外気温はまだ30℃近い日がある。
でも太陽は少しずつ低くなってきている。
このタイミングで、軒のない家の南側の窓には、夏よりも深い角度で日差しが入り込みます。
床や壁が日射で温められ、
「もう秋なのに、日中の部屋が暑い」
「9月なのに冷房を止められない」
という状態になりやすくなります。
軒がある家でも、秋になれば日差しは少し入ってきます。
ただ、その量は窓の上部が守られている分、かなり抑えられます。
この「少しだけ入る」がちょうどいいのです。

西日には軒が効きにくい

ここで一つ注意があります。
軒が効果を発揮しやすいのは、主に南面です。
東や西の窓は、太陽が低い位置から横向きに差し込むため、軒だけではほとんど遮ることができません。
特に秋の西日は、夕方の低い角度から部屋の奥まで差し込みます。
そのため、
南面 → 軒で調整
東西面 → 窓の大きさ・位置、外付けの日除け、窓ガラスの種類で調整
というように、方角ごとに考え方を変える必要があります。
「軒さえあれば大丈夫」
というわけではないのが、住宅設計の難しいところであり、面白いところでもあります。

軒は「外壁と窓まわり」も守っている

軒の効果は日射だけではありません。
雨の日に窓を少し開けておける。
外壁や窓まわりが雨に直接当たりにくく、汚れや劣化が進みにくい。
玄関や勝手口で傘をたたむスペースになる。
こうした日々の小さな使いやすさにも、軒は役立っています。
秋は台風や秋雨の季節でもあります。
雨が多い時期に、軒の出の違いを実感する方も多いのではないでしょうか。

軒をつくれない場合はどうする?

敷地の条件やデザインの関係で、どうしても軒を十分に出せないこともあります。
その場合は、
・外付けブラインドやアウターシェードを使う
・窓の上に庇(ひさし)を設ける
・南面以外の窓を小さめにする
・日射遮蔽型のLow-Eガラスを方角に応じて使い分ける
といった方法で補うことができます。
大切なのは、
「軒があるかないか」
ではなく、
「季節ごとに日差しをどう扱うかを考えているか」
だと思います。

まとめ——軒は季節に合わせて日差しを選んでくれる

軒がある家とない家の違いは、真夏や真冬だけでなく、今のような季節の変わり目にもはっきりと表れます。
夏はしっかり遮る。
秋は少しずつ入れる。
冬はたっぷり取り込む。
こうした変化を、軒は何もしなくても自然に行ってくれます。
季節によって部屋の日だまりが少しずつ広がっていく様子は、暮らしの中で季節を感じられる、ささやかな楽しみでもあります。
次回は、この秋の日射をもう少し積極的に「暖かさ」として取り込む考え方について、窓の視点からお話ししたいと思います。
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