工事日誌
エアコン1台で家全体を涼しくする家の仕組み——大切なのは「エアコンの台数」ではなく「家全体の設計」です
このたび、熊本県で発生した地震により亡くなられた方々に、心よりお悔やみ申し上げますとともに、被害に遭われた皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。
被災された地域の一日も早い復旧と、皆さまが平穏な生活を取り戻されますことを心よりお祈り申し上げます。
おはようございます。
熊本で大きな地震があり被害にあわれた方に早く元の生活に戻れることをお祈りしております。
8月に入り、いよいよ夏本番となりました。
今年も35℃を超える猛暑日もあり、外に出るだけで汗が噴き出してしまうような暑さです。
「本当にエアコン1台で家全体が涼しくなるのか?」と疑問に思う方もいるかと思います。
確かに、一般的な住宅では各部屋にエアコンを設置することが当たり前になっています。
リビングに1台、寝室に1台、子ども部屋にも1台…。
住宅の大きさによっては4~5台設置することも珍しくありません。
そのため、「エアコン1台で家全体を冷やす」と聞くと、「そんなこと本当にできるの?」と思われる方も多いでしょう。
しかし実際には、住宅の性能や設計をしっかり考えることで、それは十分可能です。
今回は、「エアコン1台で家全体を涼しくする仕組み」についてお話ししたいと思います。
エアコン1台ということが目的ではない
最初にお伝えしたいのは、
「エアコン1台」が目的ではない
ということです。
本当に目指しているのは、
・家中どこへ行っても快適であること
・部屋ごとの温度差が少ないこと
・少ないエネルギーで快適な暮らしができること
です。
その結果として、
エアコン1台でも十分冷やせる住宅になる
という考え方です。
「1台だからすごい」という話ではなく、住宅そのものの性能が高いからこそ実現できる快適性なのです。
まずは「熱を入れない家」にする
前回までのブログでもお話ししましたが、
夏の家づくりで最も重要なのは、
熱を入れないこと
です。
エアコンは、
入ってしまった熱を取り除く機械です。
つまり、
熱がたくさん入る家ほど、
エアコンは頑張らなければなりません。
そのためには、
・屋根や壁の断熱性能
・窓の性能
・日射遮蔽
この3つが非常に重要になります。
特に窓から侵入する日射は夏の室温上昇に大きく影響します。
どれだけ性能の良いエアコンを設置しても、
窓から強烈な日差しが入り続ければ、
冷房は追いかけっこになってしまいます。
だからこそ、
まずは熱を家の中へ入れないこと。
これが最初のポイントです。
気密性能が家全体の快適性を左右する
次に重要なのが気密性能です。
住宅には見えない隙間があります。
その隙間が大きいと、
冷やした空気は外へ逃げ、
外の暑い空気がどんどん入ってきます。
これではエアコンをいくら運転しても、
効率よく冷やすことはできません。
気密性能を表す指標として「C値」があります。
私が目標としているのは
C値0.5㎠/㎡以下です。
ここまで気密性能が高くなると、
冷房した空気が家全体に行き渡りやすくなり、
外気の影響も受けにくくなります。
つまり、
エアコン1台で家全体を快適にするためには、
まず家に隙間をつくらないことが重要なのです。
「冷たい空気は下へ落ちる」を利用する
では、
実際にどうやって家全体を冷やしているのでしょうか。
私が採用しているのは
小屋裏エアコンです。
夏は小屋裏に設置した14畳用エアコンを24時間運転しています。
冷たい空気には、
重くなって下へ落ちる性質があります。
逆に暖かい空気は軽くなり上へ上がります。
この自然な空気の動きを利用して、
小屋裏から冷気をゆっくり各部屋へ送っています。
すると、
家全体が少しずつ冷やされ、
リビングだけでなく、
廊下や寝室もほぼ同じ温度になります。
エアコンの風を直接感じることも少なく、
自然な涼しさが広がります。
風で冷やすのではなく「家全体」を冷やす
一般的な住宅では、
エアコンの風が当たる場所だけが涼しくなります。
一方、
性能の高い住宅では、
家全体の温度を安定させることを考えます。
床や壁、
天井までゆっくり冷やされるため、
室内全体が均一な温度になります。
そのため、
どこへ行っても
「暑い」
「寒い」
という差が少なくなります。
以前、自宅の温度測定をご紹介しましたが、
外気温が35℃近くまで上がっていても、
室内は28℃前後で安定していました。
これは、
エアコンだけではなく、
住宅全体で熱をコントロールしている結果なのです。
第一種熱交換換気も重要な役割を担う
エアコンだけで快適性が決まるわけではありません。
現在、自宅では
ダクト式第一種熱交換換気
を採用しています。
24時間換気というと、
暑い外気をそのまま入れるイメージを持たれる方もいますが、
熱交換換気では、
排気する空気の熱を利用して、
給気する空気の温度変化を抑えています。
そのため、
外気の影響を受けにくく、
室内環境が安定します。
さらに、
家全体で計画的に空気を循環させることで、
冷気も偏りにくくなります。
エアコンと換気は、
別々に考えるものではなく、
セットで考えることが大切です。
エアコンは「強く冷やす」より「安定して運転する」
夏になると、
外から帰ってきて
設定温度を20℃くらいまで下げる方もいらっしゃいます。
しかし、
高断熱住宅では、
一気に冷やすよりも、
24時間ゆるやかに運転する方が効率的です。
室温が大きく上がらないため、
エアコンも少ない力で運転できます。
その結果、
・温度変化が少ない
・湿度も安定しやすい
・消費電力も抑えやすい
というメリットがあります。
実際、自宅でも夏は14畳用エアコン1台を24時間運転しています。
「24時間運転すると電気代が高くなるのでは?」
と思われる方も多いですが、
住宅性能が高ければ、
こまめにオン・オフを繰り返すよりも効率よく運転できることが多いのです。
また、太陽光発電があれば昼間のピーク時の電気代は晴れていれば相殺できます。
エアコンの能力だけで決まるわけではない
以前のブログでも少し触れましたが、
「14畳用だから14畳までしか冷やせない」
というわけではありません。
エアコンの「○畳用」という表示は、
一定の条件で算出された目安です。
住宅性能や窓の大きさ、
日射の入り方、
気密性能によって、
実際に冷やせる範囲は大きく変わります。
例えば、
断熱性能の低い14畳の部屋と、
高断熱住宅の30畳の空間では、
必要な冷房能力が逆転することもあります。
つまり、
「家がエアコンに合わせる」のではなく、
「住宅性能を高めることで、少ない能力でも快適に暮らせる」
という考え方が重要です。
快適性は「温度」だけではない
ここまで温度についてお話ししてきましたが、
実際の快適性は温度だけでは決まりません。
湿度も大きく関係しています。
以前、
除湿についてお話ししましたが、
室温が26℃でも、
湿度が高ければ蒸し暑く感じます。
逆に、
湿度が適切に保たれていれば、
27〜28℃でも十分快適に感じることがあります。
高断熱住宅では、
温度だけではなく、
湿度まで含めて室内環境を考えることが大切です。
まとめ——エアコン1台を支えているのは住宅性能
「エアコン1台で家全体を涼しくする。」
この言葉だけを聞くと、
特別な設備や高性能なエアコンを想像されるかもしれません。
しかし、
本当に重要なのはエアコンではありません。
・断熱性能を高める
・気密性能を高める
・窓からの日射を防ぐ
・第一種熱交換換気で計画的に空気を循環させる
・小屋裏エアコンを活用し、家全体をゆるやかに冷やす
これらが組み合わさって初めて、
エアコン1台でも家全体が快適な住まいになります。
住宅の性能は、豪華な設備を増やすためのものではありません。
できるだけシンプルな設備で、無理なく快適に暮らせる住まいをつくることが、本当の意味で性能を活かした家づくりだと私は考えています。
これから家づくりを考えている方は、「エアコンを何台設置するか」ではなく、「なぜその台数で快適に暮らせるのか」という視点でも住まいを考えてみてください。
きっと、家づくりを見る目が少し変わってくると思います。