工事日誌

  • TOP
  • 工事日誌
  • 「なんとなくだるい家」の原因は温度ムラかもしれません。——家の中の小さな温度差が、知らないうちに体へ負担をかけている

「なんとなくだるい家」の原因は温度ムラかもしれません。——家の中の小さな温度差が、知らないうちに体へ負担をかけている

おはようございます。

9月も半ばを迎えようとしています。

今年は例年と比べると、この時期としては雨の日が多いように感じます。

本来、9月は秋雨前線や台風の影響で雨が増える季節ですが、ここ数年は9月に入っても残暑が厳しく、「まだ夏が終わらないな」と感じる年が多くありました。

今年は少し様子が違い、雨の日が続くことで朝晩は比較的過ごしやすく感じる日もあります。

そのため、今回の内容は今年の気候には少し当てはまりにくい部分もあるかもしれません。

ただ、例年この時期になると、

「夏の疲れが残っている気がする」

「家にいるのに、なんとなくだるい」

「冷房の効いた部屋にいると疲れる」

と感じる方もいるのではないでしょうか。

もちろん、夏の疲れや睡眠不足、暑さそのものなど、原因はいろいろあります。

ただ、家づくりという視点で考えたとき、ひとつ気になるのが「家の中の温度ムラ」です。

リビングは涼しい。

でも廊下へ出ると暑い。

洗面所へ行くとまた暑い。

2階へ上がるとさらに暑い。

寝室へ入ってエアコンをつけると今度は寒い。

こうした温度差を、一日の中で何度も繰り返している住宅は少なくありません。

一つひとつの温度差は、それほど大きな問題に感じないかもしれません。

しかし毎日、その環境の中で暮らしていると、知らないうちに体へ負担をかけている可能性があります。

今回は、

「なんとなくだるい家」

という少し感覚的なテーマから、家の中の温度ムラと快適性について考えてみたいと思います。

快適な家は「リビングが涼しい家」ではない

夏の住宅の快適性を考えるとき、

「リビングの室温が何℃か」

に目が向きがちです。

確かにリビングが28℃なのか、30℃なのかでは大きな違いがあります。

ただ、そこで一つ考えてみてほしいのが、

「家のほかの場所はどうなっているのか」

ということです。

例えば、

リビングは26℃。

廊下は29℃。

洗面脱衣室は30℃。

2階の寝室は31℃。

このような家であれば、リビングにいる間は快適でも、家の中を移動するたびに体は違う温度環境へさらされます。

反対に、

リビング27℃。

廊下27.5℃。

洗面所28℃。

寝室27.5℃。

という家であれば、数字だけを見るとリビングは少し高めですが、家全体としては穏やかな環境です。

私は住宅の快適性を考えるとき、

「一番涼しい部屋が何℃か」

よりも、

「家の中でどれくらい温度差があるか」

の方が大切だと思っています。

人の体は常に温度に合わせようとしている

人の体は、周囲の環境に合わせて体温を一定に保とうとしています。

暑ければ汗をかく。

皮膚の血流を増やして熱を逃がす。

寒ければ血管を収縮させて熱を逃がしにくくする。

こうした調整を、私たちの体は意識することなく行っています。

これ自体は自然な働きです。

ただし、

涼しい部屋から暑い廊下へ出る。

また涼しい部屋へ戻る。

さらに暑い洗面所へ行く。

今度は冷房の効いた寝室へ入る。

というように、短い時間の中で温度環境が何度も変わると、そのたびに体は調整を求められます。

本人としては、

「ちょっと暑い」

「ここは少し寒い」

程度にしか感じていなくても、こうした変化が何度も続けば、それだけ体は休みにくくなります。

家にいるのにどこか落ち着かない。

なんとなく疲れる。

そんな感覚の一部には、室内環境が関係している可能性もあるのです。

「冷房病」も温度差と無関係ではない

夏になると「冷房病」という言葉を聞くことがあります。

冷房の効きすぎた室内に長くいることで体が冷えたり、屋外との温度差が大きくなったりして、だるさや頭痛、肩こりなどの不調を感じる状態を指すことがあります。

もちろん、医学的な診断名ではありませんし、体調不良の原因を住宅だけに結び付けることはできません。

ただ、

「暑い場所と寒い場所を行き来することが負担になる」

という考え方は、住宅の温度ムラを考えるうえでも分かりやすいと思います。

例えば夏の夕方。

外は33℃。

玄関を開けると廊下は30℃。

リビングは24℃。

この瞬間、かなり大きな温度差があります。

さらに、お風呂へ入るために暑い脱衣室へ行き、入浴後はまた冷えたリビングへ戻る。

寝るときには暑い寝室をエアコンで急激に冷やす。

こうした生活を毎日繰り返していれば、

「家に帰れば休める」

というより、

「家の中でも体が環境に合わせ続けている」

状態になってしまいます。

特に体感差が出やすいのは廊下・洗面所・2階

住宅の温度ムラは、居室よりも非居室で感じやすくなります。

リビングや寝室にはエアコンがあります。

そのため、そこだけ見れば問題ありません。

一方で、

廊下

洗面脱衣室

トイレ

階段

2階ホール

こうした場所にはエアコンがないことが多く、室温が上がりやすくなります。

特に2階は、前回のブログでもお話ししたように、屋根からの熱や上昇する暖気の影響を受けやすい場所です。

1階のリビングが快適でも、

階段を上った瞬間にムッとする。

2階の廊下が暑い。

寝室のドアを開けると熱気がこもっている。

こうした状態では、家全体としての快適性は高いとは言いにくいと思います。

高性能住宅を考えるとき、

「リビングを快適にできるか」

ではなく、

「家中を大きな温度差なく保てるか」

という視点がとても大切です。

温度ムラは「上下」だけではありません

温度ムラというと、

1階と2階の差

をイメージしやすいと思います。

しかし実際には、同じ部屋の中でも温度差は起こります。

例えば、

頭は暑いのに足元は冷たい。

窓際だけ暑い。

エアコンの風が当たる場所だけ寒い。

天井付近に熱がたまっている。

こうした状態も温度ムラです。

特に一般的な壁掛けエアコンでは、冷たい風が直接体に当たることで、

室温は高くないのに寒く感じる

ということがあります。

一方で、風が届かない場所は暑いまま。

すると、

「寒いから設定温度を上げる」

「でも離れた場所は暑い」

ということが起こります。

これは室温の数字だけでは分かりません。

同じ26℃でも、空気が均一に混ざっている26℃と、場所によって24℃と29℃が混在している26℃では、体感はまったく違います。

壁や天井の温度も体感に影響します

人が感じる暑さは、空気の温度だけで決まるわけではありません。

周囲の壁や天井、床などの表面温度も体感に影響します。

例えば、室温が27℃でも、屋根からの熱で天井面が暖まっていれば、なんとなく暑く感じることがあります。

西日を受けた壁や窓の近くにいると、室温以上に暑く感じることもあります。

これは、周囲の表面から受ける放射熱の影響です。

逆に、断熱性能が高く、壁や天井の表面温度が室温に近づいている家では、同じ室温でも穏やかに感じやすくなります。

以前からお話ししているように、住宅性能は

「室温を何℃にできるか」

だけではありません。

壁や天井、床まで含めて、

「体の周りにどんな温熱環境をつくれるか」

が重要です。

高断熱・高気密住宅は温度ムラを小さくしやすい

では、どうすれば温度ムラを小さくできるのでしょうか。

まず基本になるのが、断熱と気密です。

断熱性能を高めることで、屋外からの熱が室内へ伝わりにくくなります。

気密性能を高めることで、意図しない隙間から暑く湿った空気が入りにくくなり、空調や換気を計画しやすくなります。

ただし、

高断熱・高気密にすれば自動的に家中同じ温度になる

というわけではありません。

窓から強い日射が入れば、その周辺は暑くなります。

空気が流れなければ、個室ごとに温度差が生まれます。

エアコンの位置が悪ければ、一部だけが冷えます。

そのため、

断熱

気密

日射遮蔽

換気

空調

空気の流れ

これらを一緒に考える必要があります。

性能の良い材料を使うことよりも、

「家全体としてどう機能させるか」

が重要なのです。

エアコンの台数より「温度差の小ささ」を見てほしい

住宅の見学会などで、

「この家はエアコン何台ですか?」

と聞かれることがあります。

もちろん、それも一つの目安です。

ただ、

エアコン1台だからすごい

エアコン3台だから性能が低い

という単純な話ではありません。

本当に見てほしいのは、

リビングから廊下へ出たとき。

1階から2階へ上がったとき。

洗面所へ入ったとき。

寝室へ入ったとき。

そこで、

「温度が変わった」

と感じるかどうかです。

家の中を歩いても大きな温度差を感じない。

これができていれば、空調と住宅性能がうまく組み合わさっている可能性が高いと思います。

私自身、自宅で暮らしていて感じるのもこの部分です。

夏は小屋裏エアコン1台で家全体を冷やしていますが、「リビングが特別涼しい」というよりも、

「どこへ行っても大きく変わらない」

という感覚の方が近いです。

この違いは、暮らしてみると意外に大きなものです。

「暑くない」より「気にならない」が理想

私は快適な家というのは、

「すごく涼しい家」

ではないと思っています。

むしろ理想は、

温度のことを考えなくていい家

ではないでしょうか。

暑い。

寒い。

エアコンをつけよう。

設定温度を下げよう。

この部屋だけ暑い。

風が寒い。

そうしたことを何度も考えながら生活するのではなく、

家の中にいて室温そのものを意識しない。

これが本当の意味での快適さだと思います。

「なんとなくだるい」

という感覚も同じで、何か一つ大きな原因があるのではなく、小さな不快感が積み重なっていることがあります。

音。

湿度。

風。

明るさ。

そして温度差。

住宅は、こうした小さなストレスをできるだけ減らす場所であってほしいと思います。

まとめ——家の中の温度差は、小さいほど暮らしやすい

「なんとなくだるい家」。

少し変わった表現ですが、家の快適性を考えるうえでは大切な感覚だと思います。

リビングは涼しい。

でも廊下は暑い。

2階へ行けばさらに暑い。

エアコンの前だけ寒い。

寝室へ行くとまた暑い。

こうした温度ムラがあると、私たちは一日の中で何度も違う温熱環境を行き来することになります。

そのたびに体は環境へ合わせようとします。

もちろん、体調不良のすべてを住宅性能で説明することはできません。

ただ、

「家の中の温度差をできるだけ小さくする」

という考え方は、快適な住まいをつくるうえで非常に重要です。

断熱性能を高める。

気密性能を確保する。

窓からの日射を抑える。

エアコンを適切な位置に配置する。

空気が家全体を流れる道をつくる。

そして、温度だけではなく湿度まで含めて整える。

そうしたことを一つずつ考えていくことで、

「ここは暑い」

「ここは寒い」

と感じる場所を減らしていくことができます。

家は一日の疲れを取る場所です。

家に帰ってきたときに、体がさらに環境へ合わせ続けなければならない家ではなく、自然と力を抜いて過ごせる家にする。

住宅性能という言葉は少し難しく聞こえますが、その目的はとても単純です。

家のどこにいても、

暑さや寒さをあまり意識せずに過ごせること。

そんな「なんとなくラクな家」をつくることが、本当の意味での快適な住まいなのではないかと思います。

 

ページトップへ戻る