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静岡の冬は本当に温かい?夏の暑さと健康リスクから考える、静岡の家づくりの現実

おはようございます。本日は住宅における断熱不足による健康被害についてお話をしたいと思います。
家づくりのお話をしていると、「静岡は温暖な地域だから、住宅性能はそこまで高くしなくても大丈夫ですよね」と言われることがあります。
雪がほとんど降らず、真冬でも日中は比較的穏やかに感じる日が多い静岡では、そうした印象を持たれるのも自然かもしれません。

しかし、実際に静岡で暮らし、建築に携わる者の立場として多くの住宅に関わる中で感じるのは、「温暖」というイメージが、住まいの快適性や健康面において油断につながりやすいということです。
静岡の気候は決して過酷ではありませんが、住宅性能が不十分な場合、その影響は冬と夏の両方で、じわじわと暮らしに現れてきます。

今回は、静岡の冬と夏の特徴に加え、ヒートショックや家の中で起こる熱中症といった健康リスクも踏まえながら、「静岡だからこそ考えるべき住宅性能」についてお話ししたいと思います。

1.静岡の冬は「厳寒」ではないが、ヒートショックが起こりやすい環境になりやすい

静岡の冬は、北海道や東北のように一日中厳しい寒さが続くわけではありません。
ただし、朝晩の冷え込みは意外と強く、外気温が0度前後まで下がる日もあります。

住宅性能が十分でない家では、
・夜の間に室温が大きく下がる
・朝起きた時、リビングが10度前後まで冷え込む
・廊下やトイレ、脱衣所が極端に寒い
といった状況が起こりやすくなります。

このような環境で特に注意したいのが、ヒートショックです。
暖かいリビングから、寒い廊下や脱衣所、浴室へ移動した際に、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、体に強い負担がかかります。

ヒートショックは、寒冷地だけの問題ではありません。
むしろ、部分的な暖房に頼りがちな温暖地域の住宅ほど、家の中の温度差が大きくなりやすく、リスクが高まる傾向があります。

2.温暖な地域ほど冬の死亡増加率が高いというデータが示すもの

ここで、少し意外に感じるかもしれないデータをご紹介します。

厚生労働省の人口動態統計をもとにした資料によると、日本では冬になると死亡者数が増加しますが、その増加率は必ずしも寒冷地で高いわけではありません。
静岡県を含む比較的温暖とされる地域でも、冬季の死亡増加率が高い傾向が示されています

意外かもしれませんが北海道、青森、新潟、秋田などの日本では寒いと思われている地域が下位をほぼ独占しています。このデータが示しているのは、「外の寒さ」そのものよりも、「家の中の温度環境」が健康に大きく影響している可能性です。

・暖房されていない空間が多い
・家の中に寒い場所が残る
・日常的に温度差のある環境で生活している

こうした状況が、心疾患や脳血管疾患などのリスクを高めていると考えられます。
静岡は「寒くない地域」という意識が強い分、冬の住環境への対策が後回しになりやすい地域でもあるのです。

3.静岡の夏は、家の中でも熱中症が起こりやすい

静岡の健康リスクは、冬だけではありません。
昨年は全国で一番の暑さを記録したことも記憶に新しいですが今後さらに夏の気温が上がることも想定されます。
そして夏になると、今度は熱中症が問題になります。

・南面や西面の窓から強烈な日差しが入る
・外部の湿気が建物内に侵入してくる
・2階や屋根に近い空間が特に暑くなる

断熱性能や日射遮蔽が不十分な住宅では、室内にいても体が熱を逃がせず、知らないうちに熱中症の状態に近づいてしまうことがあります。

特に注意が必要なのは、
・高齢者
・小さなお子さん
・在宅時間が長い方

「家の中にいるから大丈夫」と思っていても、室温や湿度が高い状態が続くと、体調を崩すリスクは高まります。

木造住宅ではありませんが鉄筋コンクリート造のマンションの最上階で暮らしていると日中の暑さをコンクリートが吸収し蓄熱し、夜になっても冷めない状態が続くなどの現象も起こります。

4.冬のヒートショックも、夏の熱中症も「家の性能」で大きく変えられる

ヒートショックと熱中症は、一見するとまったく別の問題に見えますが、実は根本的な原因は共通しています。

それは、
家の中の温度差が大きいこと
家全体の温熱環境が安定していないこと
です。

断熱と気密をしっかり確保し、
・冬は家全体をゆるやかに暖める
・夏は日射を遮り、熱を家に入れない

こうした基本を押さえることで、急激な温度変化を抑え、体への負担を大きく減らすことができます。

静岡のように冬と夏の両方を考える必要がある地域では、この「年間を通した温度の安定性」が特に重要になります。

5.実際に暮らして感じる、静岡で高性能住宅を建てる意味

私自身、静岡で高断熱・高気密の住宅に暮らしていますが、冬と夏の両方を経験して感じるのは、「体への負担が明らかに少ない」ということです。

・冬でも家の中の移動が苦にならない
・浴室や脱衣所が極端に寒くならない
・夏もエアコンを弱く長く使うだけで落ち着く
・暑さや寒さによる疲れが残りにくい

これらは、設備の性能というよりも、家全体の温熱環境が整っていることによる効果だと感じています。
特に夏も冬も夜、しっかり眠ることが出来るのが一番だと感じております。

6.おわりに

静岡は温暖な地域と言われますが、冬はヒートショックのリスクがあり、夏は家の中でも熱中症が起こり得る気候です。
これらは決して特別な話ではなく、住環境によって誰にでも起こり得る問題です。

家づくりは、見た目や設備だけでなく、家族の健康を守る「器」をつくることでもあります。
静岡で家を建てるからこそ、冬と夏の両方を見据えた住宅性能を大切にしていただければと思います。

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