工事日誌
住宅における軒の役割——夏を涼しく、冬は日射を活かす「日本の知恵」
こんにちは。
今回は、「軒」についてお話しします。
軒は“雨よけ”の印象が強いかもしれませんが、実は住まいの快適性・室温の安定・光熱費の削減に大きく関わる重要な要素です。
そして軒は、決して新しい技術ではなく、
古来の日本人が夏を涼しく暮らすために生み出してきた知恵でもあります。
日本の伝統的な民家では深い軒をつくり、
・強い日差しを遮る
・室内に日陰をつくる
・風を通して涼しくする
といった工夫が自然と取り入れられていました。
現代ではエアコンが当たり前になりましたが、軒が生み出す“自然な日射調整”の力は、今でも住宅の快適性に直結しています。
1.軒の最大の役割は「夏の直射日光を防ぐこと」
軒のもっとも大切な役割は、
季節に応じて窓に入る日差しをコントロールすることです。
特に夏は太陽高度が高く、真上から強烈な日差しが降り注ぎます。
軒があることで、この強い日射を遮り、室内が急激に熱くなるのを防ぐことができます。
・軒がある家
→ 直射日光が窓に当りにくい
・軒がない家
→ 短時間で室温が急上昇しやすい
→ 冷房負荷が大きく、光熱費も上がる
軒がしっかり出ているだけで「自然に涼しい家」になりやすくなる。
これはまさに、日本人が長い歴史の中で育んできた“日陰の知恵”と言えます。

2.軒がない家は「夏の暑さ」を大きく受けやすい
近年はデザイン性を重視し、軒を極力出さない家も増えています。
しかし軒がない家は、夏の直射日光の影響を特に強く受けます。
・室内が急激に暑くなる
南側や西側に大きな窓があると、強い日差しが直接室内に入り込み、
床や壁が熱を蓄えて短時間で室温が上昇します。
・冷房負荷が増えて光熱費が上昇
室内に熱がこもりやすく、冷房効率が下がります。
軒は、特に夏の快適性を左右する大切な要素なのです。
3.軒の出幅(長さ)はどう決める?
軒の効果は「どの程度出ているか」で大きく変わります。
一般的な考え方としては、
窓の高さ:軒の出 = 10:3
がひとつの目安になります。
これは、夏の日差しを効果的に遮りつつ、冬の日射もある程度確保できるバランスです。
4.冬は軒だけではなく「敷地配置」も重要
—— 等時間日影図で“冬の日照を最大化する”
冬は夏と違い太陽高度が低く、日射の入り方は軒の深さだけでは最適化できません。
そこで重要になるのが、敷地のどこに建物を配置するかです。
住宅設計では、
周辺建物を含めた「等時間日影図」を作成し、
・冬に長時間日影になる場所を避ける
・冬の日射を確保しやすい位置にリビングを配置
・窓の大きさ・位置・高さを最適化
といった検討を行います。
夏は軒で日射を調整し、冬は建物配置で日射を確保する。
この両方を考えることで、1年を通して快適な住環境をつくることができます。
5.軒はデザインにも影響を与える
軒は機能面だけでなく、住まいの外観にも大きな影響を与えます。
・建物に奥行きが生まれる
・軒の長さが中途半端だとかえって美観を損ねる
(短すぎても長すぎてもNG。建物全体のバランスが大切)
・屋根や庇の厚みを薄く見せる工夫でより美しく見える
伝統的な日本家屋の「深い軒」が美しく感じるのは、
機能とデザインが高いレベルで調和しているからです。
6.軒ゼロ住宅について
ここ数年、モダンな外観デザインを求める方を中心に「軒ゼロ住宅」が増えています。
すっきりした箱型のデザインは確かに魅力的で、SNSでも多く見られます。
軒ゼロ住宅が好まれる理由
・シャープでシンプルな外観
・ミニマルで現代的なデザイン
・箱型の建物で映える
デザイン的には非常に優れていますが、注意すべき点もあります。
・軒ゼロの注意点(1)夏の日射遮蔽ができない
軒がないため、夏の日射がダイレクトに室内へ侵入します。
高断熱住宅では一度入った熱が逃げにくいため、より暑さが残りやすく注意が必要です。
・軒ゼロの注意点(2)雨漏りリスクが上がる
これは誤解されやすい部分ですが、
軒ゼロ住宅は 雨漏りしやすい構造ではありません。
ただし、
外壁上部を守る軒がない分、雨漏りリスクが増大しやすい構造になる
というのが正確な表現です。
外壁の上部(パラペット部分)はわずか20〜30mm程度の出幅しかなく、
ここに風雨が直接あたることで、雨漏りリスクが上がります。
ただし、いずれも対策は可能です。
軒ゼロの対策
・日射対策:外付けブラインド・アウターシェードの併用
(※窓の種類によって使用できない場合あり)
・雨漏り対策:パラペット部分の納まりを強化
特に、雨仕舞い部材はハウゼコ(大阪)の製品が性能・信頼性ともに高くおすすめです。
都市部では敷地に余裕がなく、軒を十分に出せないこともあります。
その場合は、上記の対策をしっかり行うことが非常に大切です。
7.まとめ —— 軒は「快適性をつくる日本の知恵」
軒は目立たないパーツですが、
・夏の強い日差しを遮る
・室温上昇を抑えて光熱費を削減
・冬は建物配置で日射を確保
・素材の劣化を防ぐ
と、住まいの快適性に非常に大きく影響する要素です。
古来の日本人が大切にしてきた「日陰の知恵」は、
現代の高性能住宅でも十分に活かせる考え方です。
これから家づくりをされる方は、
断熱材や窓性能だけでなく、ぜひ 軒の設計と敷地配置 にも注目してみてください。
住み心地が驚くほど変わります。